開発効率やメンテナンス性の観点から、ログを残すことは非常に重要です。
Pythonにはログ出力用に「logging」モジュールが用意されています。
loggingを使うことで、簡単にログ管理をすることができます。
loggingとは?
loggingの目的・存在意義
loggingは、その名の通りログを出力するために存在します。
loggingには、出力先の設定やログレベル(出力する閾値)などの管理ができるような便利な機能があります。
printとの違い
printは最も簡単な出力方法です。
しかし、出力先がコンソールに限定されているため、ログの出力としては適切ではありません。
loggingは、printよりかは設定が複雑ですが、誰にどのような情報を伝えたいのかに応じて、適切な出力設定をすることができます。
loggingの主な機能
ログレベル
ログレベルというのを設定することができます。
ログレベルは、ログを出力する閾値のことです。
例えば
「デバッグの時には出力したいけど、お客さんへのデモの時は出力したくない」
「致命的なエラーだけを出力したい」
こういった、用途別にログを出力することができるような機能です。
ログレベルには、CRITICALからNOTSETまで6段階あります。
基本的には、ERROR,INFO,DEBUGの3つを使い分けることになると思います。
出力先設定
ログの出力先を設定することができます。
コンソールへの出力はもちろんのこと、ファイルへの出力だけでなく、
メール送信や、ネットワークソケットにまで、多岐に渡ります。
これらが、logging(あるいはHandler)の設定で簡単に行うことができます。
フォーマット設定
ログの出力フォーマットを簡単に設定することができます。
ログを出力すると一言で言っても、何を出力するかも重要です。
日付、ログレベル、実行プログラム、伝えたいことなどあります。
これらのフォーマットを簡単に設定することができます。
日付の場合は、%(asctime)s。
ログレベルの場合は、%(levelname)s。
実行プログラムは、%(filename)s。
伝えたいことは、%(message)s。
これらだけでなく、フォーマットに使用できるものは多岐に渡ります。
loggingの使い方
モジュールごとにimportし、自身を設定する
まずは、loggingをimportしてしましょう。
標準で用意されていると思いますので、pip installなどは不要です。
import logging
loggerを作成する
次に、loggerを作成しましょう。
loggerというのは、loggingの子と思ってください。
後述のアンチパターンに記載しますが、loggingを直接編集・設定して使い回すことは推奨されていません。
では、早速loggerを作成しましょう。
logger = logging.getLogger(__name__)
これで、loggerの作成は完了です。
__name__と記載している通り、実行しているモジュール名を与えることが多いです。
getLoggerで名前をつけているだけのようなものですので、__name__ではなく、任意の文字列を与えることも可能です。
Handlerを作り、loggerに設定をする
次に、loggingのHandlerを作りましょう。
Handlerでは、出力の種類を設定します。
例えば、ログをファイルに出力する場合は、以下のように設定します。
filehandler = logging.FileHandler('test.log')
コンソールに出力する場合は、以下のように設定します。
streamhandler = logging.StreamHandler()
Handlerの作成はこれで完了です。
作成したHandlerをloggerに設定してあげましょう。
logger.addHandler(filehandler)
logger.addHandler(streamhandler)
これで、loggerにHandlerの設定が完了しました。
このloggerを使って、ログ出力をするときは、コンソールとファイルへの出力がされます。
このように、1つのloggerに対して、複数のHandlerを設定することが可能です。
ログレベルを設定する
ログレベル(出力の閾値)を設定しましょう。
logger.setLevel(logging.DEBUG)
これで、loggerにログレベルを設定することが完了しました。
こちらのケースでは、logger単位でログレベルを設定しました。
ユースケースとしては少ないと思いますが、ログレベルはHendler単位で設定することも可能です。
その場合は、以下のように記述します。
streamhandler.setLevel(logging.DEBUG)
このように記述することで、streamhandler(先程設定した、コンソールに出力するためのHandler)にログレベルが設定されました。
Handlerに設定する場合は、loggerにHandlerを登録するよりも前に、Handlerのログレベルを設定するように注意しましょう。
ログの出力
では、ここまで設定したら、実際にログの出力をしてみましょう。
logger.debug('testlog_debug')
logger.info('testlog_info')
logger.error('testlog_error')
こちらの記述で、ログの出力が可能になります。
ログレベルでDEBUGを指定したので、今回の場合は全て出力されます。
しかし、例えばログレベルをINFOに指定した場合は、"testlog_debug"は出力されません。
ここまでのサンプルコード
対話型ですが、ここまでの内容のコードです。
自由に組み替えて遊んでみてください。
>>> import logging
>>>
>>> logger = logging.getLogger(__name__)
>>>
>>> filehandler = logging.FileHandler('test.log')
>>> streamhandler = logging.StreamHandler()
>>>
>>> logger.addHandler(filehandler)
>>> logger.addHandler(streamhandler)
>>>
>>> logger.setLevel(logging.DEBUG)
>>>
>>> logger.debug('testlog_debug')
testlog_debug
>>> logger.error('testlog_info')
testlog_info
>>> logger.error('testlog_error')
testlog_error
生成されたtest.logの中身を記載しておきます。
testlog_debug
testlog_info
testlog_error
loggingを効果的に使うテクニック
ログのformatを設定する
出力するログのフォーマットを設定することができます。
前章のフォーマット設定でも説明したのですが、%(levelname)s:などの形式でログに出力する情報を簡単に設定できます。
使い方は、出力する文字列のStringを作成します。
下の例ですと、時間とログレベルとメッセージを表示します。
formatter = logging.Formatter('[%(asctime)s][%(levelname)s][%(message)s]')
日付などの一部の情報については、データフォーマットを指定することができます。
データフォーマットの設定は任意です。
上の例でデータフォーマットを指定する場合は、以下のようにします。
format = '[%(asctime)s][%(levelname)s][%(message)s]'
datefmt='%Y/%m/%d %I:%M:%S'
formatter = logging.Formatter(format, datefmt)
これらの設定を終えたら、このフォーマットをHandlerに設定しましょう。
streamhandler.setFormatter(formatter)
filehandler.setFormatter(formatter)
これで、コンソールへのログ出力とファイルへのログ出力でフォーマットを指定することができました。
コンソールへの出力は、以下のようになりました。
>>> logger.debug('testlog_debug')
[2021/04/14 12:25:31][DEBUG][testlog_debug]
configファイルで設定をする
loggingの設定は、pythonコード内だけでしか設定できないことはありません。
.confをはじめ、.jsonや.ymlでもconfigファイルを作成することができます。
configファイルで設定しておくメリットは、複数モジュールで同じlog設定を使用する場合に、有効です。
各モジュールでのlogging設定が2,3行でできるので、簡潔になります。
今回は、ごく一般的に使用される、yaml形式のconfigファイルを読み込む方法を紹介します。
(yamlは標準でインストールされていないので、pip install pyyamlなどのコマンドでインストールをする必要があります。)
yamlを読み込む場合は、python側では、以下のようにして呼び出します。
import logging
import yaml
with open('config.yml') as file:
logging.config.dictConfig(yaml.safe_load(file.read()))
logger = logging.getLogger('sample')
#以降、通常のloggerと同じように使用する。
このように記述することで、loggerにyamlファイルで設定した内容が反映されます。
厳密に言えば、yamlファイルに記述された"sample"という名前のloggerの設定が、pythonコードないのloggerにコピーされました。
(余談ですが、ファイルオープンにはwith句を使用することで、ファイルを安全に開くことができます。)
では、肝心のyamlファイルの中身ですが、以下のように設定します。
version: 1
formatters:
fmt1:
format: '[%(asctime)s][%(name)s][%(levelname)s][%(message)s]'
handlers:
streamhandler:
class: logging.StreamHandler
formatter: fmt1
stream: ext://sys.stdout
filehandler:
class: logging.FileHandler
formatter: fmt1
filename: sample.log
loggers:
sample:
level: DEBUG
handlers: [streamhandler, filehandler]
propagate: no
qualname: sample
root:
level: DEBUG
こちらの場合は、"sample"という名前のloggerに対して、コンソール出力用のStreamHandlerとファイル出力用のFileHandlerを設定しました。
yamlの場合は、Handlerを設定するときは、親クラスからきちんと書くようにしましょう。
ログレベルは、いずれもDEBUGにしています。
出力のフォーマットは、StreamHandlerもFileHandlerも同じフォーマットを設定しました。
先頭に記述してある"version"ですが、こちらは2021年4月現在では、"1"しか設定できません。
現状では、特に意識する必要のない項目です。
loggerの中に設定しているpropagateは、"yes"か"no"を選択できます。
"yes"を選択した場合は、logger_rootに設定した設定を引き継ぎます。
"no"を選択した場合は、logger_rootの設定を引き継ぎません。
ちなみに.confで必要だったqualnameは、yamlでは任意となっています。
yamlの記述形式の都合上、名前は先に書いているからです。
rootの項目にもHandlerを設定してしまうと、二重にログが出力されることがあるので、注意してください。
loggingのアンチパターン
logging(root)でログレベルを操作する
実は、loggingはここまで複雑な設定をしなくても、使用することができます。
例えば、以下の通りです。
import logging
logging.basicConfig(level=logging.DEBUG)
logging.debug('Debug Message')
上記の例では、ログレベルの設定だけをしていますが、basicConfigにファイル名などを与えることで、さまざまなカスタマイズができます。
上記をみてわかる通り、loggerやhandlerを作成せずに、logの出力をしています。
こちらを実行しても、プログラムは問題なく実行されると思います。
しかしながら、こちらの方法は、開発者の中では好まれていません。
なぜならば、loggingはloggerの親のような存在であるからです。
loggingを直接設定してしまうと、loggerに影響を与えてしまう可能性があります。
複数のモジュールを使用する場合や、開発メンバーが複数人いる場合は、loggingを直接設定する方法はやめたほうが良いでしょう。
まとめ
今回は、Pythonのloggingの使い方について紹介しました。
loggingを利用することで、簡単にログ出力をカスタマイズすることができます。
使い方を簡単に復習すると、
①loggingをimportする
②loggerを作成する
③Handlerを作成し、loggerに設定する
④loggerにログレベルを設定する
⑤loggerで出力をする
以上になります。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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